アメリカのキャリア教育の先進事例から学ぶ

~キャリア教育の目的は「学力向上」「コミュニティを支える人材の育成」。地域に根ざした題材で、地域を支える意識も高める~

 

【早稲田大学大学院教職研究科教授
三村隆男氏】

 


日本では、キャリア教育を狭義に捉える傾向が

中等教育の先生方の中には、キャリア教育を単なる進路選択のための教育と思っている方も多いと思います。けれど、そもそもキャリア教育とは、教育基本法の「平和で民主的な国家および社会の形成者になる資質を育てる」ということそのものなのです。にもかかわらず、学校教育には純潔主義的なところがあり、仕事や職業といったものを排除したがる傾向があるようなのです。そのためキャリア教育も、進路という一部分だけが注目され、正しく理解されていないように思います。

このような認識ですと、学校も、外部の支援を活用して社会の生きた教育資源を学びに取り入れる必要を感じません。学校内だけでできると思ってしまうのです。また一方には、効果的な外部支援がまだあまり実践されていない、という実情もあります。しかし、キャリア教育が正しく理解され活動が本格化すれば、先生方のご努力に加え、外部の支援も得た方が、必ずや教育効果は上がることでしょう。

 

外部支援を活用し、教育も地域の活性化も達成

アメリカでは、キャリア教育の目的が「学力向上」「コミュニティを支える人材の育成」と明確に打ち出され、キャリア教育は今ではCareer Technical Education(キャリア・テクニカル教育)とも表現されます。technicalは、「技術」ではなく「専門性」と捉えたほうがよいでしょう。どのような専門性を持って、何になりたいかを考えさせることで、学力向上とキャリア教育を結びつけています。

例えば、ケンタッキー州ルイビル市の小学校では、「Engineering is Elementary」というプログラムを活用した授業を行っています。ボストン科学博物館がプログラム作りに参加しているのですが、例えば子どもたちは、いろいろな配合でコンクリートを作る。それを大学の工学部などの研究施設で強度測定することによって、水や砂や砂利とコンクリートの配合によって強度が違ってくることを知ります。また、この地域は川が多いので、橋の模型を作ったり水質検査をしたり。地域の実情に根ざした題材で授業を行います。子どもたちは高度な工学を学ぶわけはありませんが、このような体験を通して感動します。それが大事なのです。興味を持ち関心を深め、いずれ技術者となってこの地域に戻って来ることが目指されているのです。このような教育には地域社会の協力が不可欠です。学校と地域を結ぶコーディネーターも介在しています。

将来、社会で活躍し社会に貢献できる人間を育てるためには、学校以外の人、つまりキャリア教育コーディネーターの存在は非常に重要なのです。


 [プロフィール]

三村隆男
昭和28年生まれ。埼玉県立高校の教員時代からキャリア教育の実践に取り組む。自らの経験に裏打ちされた「生徒が社会で主体的に生きるための基礎的な能力や態度の育成」の方法論を全国で講演。公立中学校でスクールカウンセラーとして生徒の指導や相談にあたると同時にキャリア教育を推進した経験もある。